障害者の地域生活とインクルーシブ教育 ―障害理解「医療モデル」⇒「社会モデル」そして「人権モデル」へ― 障害者権利条約第1回日本審査に対する総括所見(2022年)より                   弁護士 柳原 由以(やなぎはら ゆい) 1 医療モデルから社会モデルへ  ・障害とは何か    障害の定義の変遷    「医療モデル」    「社会モデル」1981年国際障害者年行動計画, 1990 ADA           WHOの障害国際分類;ICIDH(1980)→ICF(2001)    「人権モデル」2006年障害者権利条約に含まれたもの  ・差別とは何か  人種差別撤廃条約・女性差別撤廃条約・子どもの権利条約=区別・排除・制限 ☆障害者権利条約の差別の定義に、なぜ「合理的配慮の不提供」が入ったのか 2 人権モデルが目指すもの  ・障害者権利条約において新たに人権として認められた権利   インクルージョン(3条)   あるがままの状態を尊重される権利(17条)   地域生活(19条)   ☆障害者の人権として、なぜこれらが必要になったのか 3 日本への初回総括所見(2022)   総括所見における人権モデルへの言及箇所   @ 1条〜4条:一般原則及び義務     7(a)障害者へのパターナリスティックなアプローチの適用による障害に関連する国内法制及び政策と本条約に 含まれる障害の人権モデルとの調和の欠如   A 16条:暴力及び搾取からの自由   36(c)司法手続における、障害の人権モデル、利用の容易さ(アクセシビリティ) 及び合理的配慮に関連する司法府及び行政府の職員に対して、専門的な開発計画を提供すること。   B 19条:自立した生活および地域社会への包容     42(f) 障害者にとっての社会における障壁の評価及び障害者の社会参加及び包容のための支援の評価を含む、障害の人権モデルに基づいた、地域社会における支援及びサービス提供を確保するため、既存の評価形態を見直すこと   C 24条:教育     52(d) 通常教育の教員及び教員以外の教職員に、障害者を包容する教育(インクルーシブ教育) に関する研修を確保し、障害の人権モデルに関する意識を向上させること。   D 25条:健康     54(c) 保健の専門家の研修に障害の人権モデルを統合すること。全ての障害者がいかなる医療及び手術治療を受ける場合も、事情を知らされた上での自由な同意を得る権利を有していることを強調する。   E 26条:ハビリテーション及びリハビリテーション     56(b) 障害の人権モデルを考慮したハビリテーション及びリハビリテーション制度を拡充すること、及び各自の必要性に基づいて、全ての障害者がこれらサービスを利用する機会を有することを確保すること。   F 32条:国際協力     67委員会は国際協力事業において障害が完全には主流化されておらず、関連する戦略及び計画が、障害者団体との緊密な協議の上で障害の人権モデルに基づき策定されていないことを懸念する。 4 人権モデルからの地域生活  ・社会的障壁の除去“だけ”では乗り越えられない「人として生きる」こと